新横浜旅行の記憶と新・御宿かわせみ3花世の立春

投稿者: | 2025年11月17日

新・御宿かわせみ 花世の立春

表題作「花世の立春」では、花世と源太郎が「立春に結婚しましょう」と急に祝言を決意し、わずか7日後に婚礼を迎えるという展開。若い二人の門出が描かれ、シリーズの大きな節目となっています。

花世は旗本の娘でありながら、家族を強盗に殺されるという過去を持ち、心に傷を抱えつつも快活で真っ直ぐな性格が魅力的と評されています。

平岩弓枝の『新・御宿かわせみ』シリーズは、江戸から明治へと時代が移り変わる中で、人情と推理の物語を描いている。江戸の町屋や長屋の風景から一歩外へ出ると、そこには横浜の居留地が広がり、外国商会や洋館が立ち並ぶ。シリーズの中で描かれる横浜は、まさに文明開化の象徴であり、和と洋が交差する舞台だった。

文明開化の横浜と「新・御宿かわせみ」

今年一月、甥の結婚式で訪れた横浜を歩いたとき、その風景が「新・御宿かわせみ」の時代と重なった。赤レンガ倉庫から山下公園へ向かう道すがら、近代的なホテルの間に残る古い建物を見つけたとき、私は思わず「これは物語の舞台の記憶だ」と感じた。フランス大使館跡や旧英国総領事館など、木造の洋館が静かに佇み、文明開化の息吹を今に伝えていた。

新しい門出と時代の交差

甥の結婚式は、家族にとって新しい門出だった。華やかな披露宴の余韻の中で歩いた横浜の街は、「新・御宿かわせみ」に描かれる人々の新しい人生と重なって見えた。源太郎と花世が立春に祝言を挙げる場面も、文明開化のただ中での「新しい門出」であり、古い価値観と新しい時代の狭間に立つものだった。

近代的なホテルの窓に映る古い洋館は、まるで「過去と未来が同じ場所に共存している」ことを示しているようだった。甥の結婚式で感じた家族の歴史と、「新・御宿かわせみ」の時代に描かれる文明開化の変化が、一本の糸で結ばれているように思えた。

記憶の重層としての横浜

横浜は、私にとって「記憶の重層」を体感できる街だ。赤レンガ倉庫の堅牢な壁は明治の商館の記憶を伝え、山下公園の潮風は居留地時代の外国人たちの生活を思わせる。そして近代的なホテルの中に残る木造の建物は、「新・御宿かわせみ」の時代の空気を今に伝えている。

文学と現実が重なり合う瞬間、甥の結婚式で歩いた横浜の街は、文明開化の横浜に生きる人々の姿と響き合った。人の記憶も街の記憶も、古いものと新しいものが共存しながら次の世代へと受け継がれていく。

結び

「新・御宿かわせみ」の時代に描かれる横浜と、甥の結婚式で歩いた横浜。その二つの記憶が重なり合い、私の中でひとつの物語になった。文明開化の横浜に生きる人々の新しい門出と、現代の横浜で新しい人生を歩み始めた甥の姿。その両方が、私に「時代を超えて人は門出を祝う」という普遍の真実を教えてくれる。

📖 基本情報

  • 著者:平岩弓枝
  • 出版社:文藝春秋(文春文庫)
  • 刊行日:2012年12月4日
  • ページ数:296ページ
  • ISBN:416771020X
  • シリーズ位置:「新・御宿かわせみ」第3巻

🌸 収録作品

  1. 明石橋の殺人
  2. 俥宿の女房
  3. 花世の立春(表題作)
  4. 糸屋の女たち
  5. 横浜不二山商会
  6. 抱卵の子

🌟 内容の特徴

他の短編は推理小説風の筋立てもあり、江戸から東京へ、着物から洋服へと移り変わる時代背景が色濃く反映されています。

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