小西マサテル著『名探偵じゃなくても』は、認知症を患う祖父が、鋭い観察力と人間理解で事件の真相に迫る、静かな余韻を残すミステリーです。
タイトルにある「名探偵じゃなくても」という言葉は、単なる謙遜ではなく、“誰にでも見える真実”があることを示しています。それは、記憶が曖昧になっても、役割を失っても、なお残る「その人らしさ」へのまなざしです。
🧩 推理と日常が交差する物語
祖父はレビー小体型認知症を患いながらも、かつての教え子である刑事・我妻から事件の相談を受け、密室の謎や学校の七不思議など、様々な事件に挑みます。
彼の推理は、論理よりも“人を見る力”に根ざしています。誰かの言葉の裏にある感情、行動の背景にある思い──それらを丁寧に拾い上げていく姿は、名探偵とは違うかたちで真実に近づいていきます。
🌿 老いと役割──静かに残るもの
この作品では、老いが“失われていくもの”としてではなく、“残っているもの”として描かれています。祖父は、記憶の揺らぎの中でも、誰かの役に立ちたいという思いを持ち続けています。
その姿に、私はふと日々の中で感じることを重ねました。誰かに必要とされること、役割を持ち続けること──それは、年齢や状態に関係なく、人が生きていくうえでの希望なのかもしれません。
✍️ 読後に残る問い
「名探偵じゃなくても、できることはある。」
この言葉は、私たち自身にも向けられているように感じます。完璧でなくても、専門家でなくても、誰かのそばにいること、気づくこと、見守ること──それらは、日常の中にある“推理”なのかもしれません。