今こそ読みたい『小樽殺人事件』。サントリーオールドと昭和の香りに溺れる極上旅情ミステリー

投稿者: | 2026年8月16日

ふと「あの頃の空気感」に無性に浸りたくなることはありませんか?

今回ご紹介するのは、旅情ミステリーの金字塔・内田康夫さんの浅見光彦シリーズ『小樽殺人事件』です。

本作は、小樽の美しい港町から信州・安曇野へと繋がる壮大な謎解きが魅力の名作。ですが、今この令和の時代に読み返してみると、ストーリーの面白さはもちろん、作中に散りばめられた「昭和の匂い」がする言葉たちに、どうしようもなく胸が締め付けられるのです。

今回は、本作の基本情報とともに、思わず「懐かしい!」と膝を打ちたくなる昭和エモい見どころをご紹介します。

『小樽殺人事件』ってどんなお話?

まずは、本作の基本情報を簡単におさらいしておきましょう。

  • 著者:内田康夫
  • 主人公:浅見光彦
  • 主な舞台:北海道・小樽、長野県・安曇野
  • キーアイテム:遺体のそばに残される「黒揚羽蝶(くろあげはちょう)」の切り絵

【あらすじ】 ルポライターの浅見光彦は、取材で訪れた小樽港で、海に浮かぶ女性の遺体を発見。被害者は地元の名家「小山内家」の夫人でした。遺品の中にあった「黒揚羽蝶」の謎を追う光彦は、やがて信州・安曇野へと導かれ、明治維新から続く一族の暗い因縁に対峙することになります。

胸に刺さる!作中で見つけた「昭和レトロ」な名セリフたち

本作の最大の調味料は、今の時代には失われつつある「泥臭くも人間味あふれるディテール」です。個人的にシビれたポイントを3つご紹介します。

① 「水割り、サントリーオールドでいいです。」

光彦が劇中のバー「クラブ忍路(おしょろ)」で放つこのセリフ。しびれますよね。 今でこそハイボールやレモンサワーが主流ですが、昭和の夜の主役といえば、やっぱり「だるま」の愛称で親しまれたサントリーオールド。 気取った洋酒ではなく、あえて「オールドでいいです」と注文する光彦の気さくさと、当時のスナックやバーに漂っていた煙草とアルコールの匂いが、この一言から一気に立ち上ってきます。

② 「姉は、津田家の犠牲になった。」

この「家格」や「一族の縛り」という重苦しい響き。これぞ昭和サスペンスの醍醐味です。 個人の自由が最優先される現代から見ると大げさに聞こえるかもしれませんが、当時は「家」の重みが今よりずっとリアルでした。だからこそ、この言葉の裏にある悲恋や憎悪が、物語のサスペンス度を極限まで高めてくれるのです。

③ 「三人寄ればフェリーで小樽」

おどろおどろしい事件の合間に、ふっと差し込まれるこの軽妙なキャッチコピー。 ことわざをもじった昭和の広告らしいクスッと笑えるノリに、当時のどこかのんびりとした空気感が漂います。この緊張と緩和のバランスこそが、内田康夫作品の憎いところであり、私たちが浅見光彦を愛してやまない理由でもあります。

まとめ:あの頃の熱気と哀愁に、もう一度会いに行こう

港町・小樽の冷たい海風と、安曇野ののどかな風景。そこに絡み合う、一族の因縁と、昭和を生きる人々の濃厚な人間模様。

携帯電話もインターネットもない時代だからこそ、光彦は足で稼ぎ、人と対話し、時にスナックで「オールド」を傾けながら真実に迫ります。

「最近のミステリーはスマートすぎて物足りない」 「あの頃の、少し泥臭くて温かい物語に触れたい」

そんな方は、ぜひ『小樽殺人事件』のページをめくってみてください。きっと、忘れていたあの懐かしい時代へ、浅見光彦が連れて行ってくれますよ。

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