記憶のなかの「小京都」へ。和紙の感触とKindleで再訪する『津和野殺人事件』

投稿者: | 2026年7月19日

日曜日の穏やかな朝。窓の外に広がる深い緑を眺めながら、いつものように珈琲を淹れます。 今朝、私のマグカップの下に敷いているのは、津和野名産の和紙で作られたコースター。指先に触れるその独特な温もりと質感は、一瞬にして私をあの年の記憶へと連れ戻してくれます。

■ 1997年、山口へのドライブと一冊の本

それはちょうど、大河ドラマで『毛利元就』が放映されていた頃のことでした。 両親からの「山口県へ自動車で行ってみよう」という提案に、当時、内田康夫さんの『津和野殺人事件』を読み終えたばかりだった私は、「ぜひ行きたい!」と真っ先に賛成したのを覚えています。

車窓から眺めた瀬戸内海のきらめき、そして山口から足を伸ばしてたどり着いた島根の「小京都」津和野。あの時、自分へのお土産として買った和紙のコースターが、今こうして手元にある。時の流れの不思議さを感じながら、Kindleで再び物語のページをめくっています。

■ シリーズの運命を変えた、メタフィクションの仕掛け

本作は、浅見光彦シリーズにとって非常に大きな「転換点」となった作品です 。 最大の特徴は、作者である内田康夫先生ご本人が作中に登場すること。ここから、「ルポライター浅見光彦が解決した実際の事件を、内田康夫が小説にして出版している」という、現実と虚構が入り混じったユニークな世界観が定着していきます。

光彦が解決した事件が本になり、それがベストセラーになることで、光彦自身が「有名人」になっていく予兆 。かつて家族旅行の途中で読んだ時も、この「名探偵の誕生前夜」のようなワクワク感に胸を躍らせたものでした。

■ Moleskine Pocket に刻む、自分だけの「森」

読書を進めながら、心に留まった言葉や景色を、愛用のMoleskine Pocket(モレスキン・ポケット)に書き留めています。

ブログのネタ帳として使っているプロッターM6の機動力も素晴らしいですが、読書の深い余韻を味わうには、モレスキンのあのがっしりとした佇まいがよく似合います。相棒は、先日ご紹介したミルクコーヒー色のuni-ball one 3(シュガーブラウン)

和紙のコースターに置かれた珈琲を一口含み、0.3mmの繊細なインクでモレスキンに文字を刻む。デジタルのKindleで物語を追い、アナログの道具で記憶を繋ぎ止める。そんな贅沢な日曜日の朝を過ごしています。

■ おわりに

物語の舞台としての津和野、そして個人的な想い出としての津和野。 和紙のコースターの柔らかな手触りとともに、当時の家族の会話や、旅先で吹いた風のにおいが鮮やかによみがえります。

内田康夫さんの描く「土地の記憶」は、読むたびに新しい発見と、忘れていたはずの愛おしい懐かしさを届けてくれます。 みなさんの手元にも、そんな「旅の記憶」を呼び覚ます魔法のアイテムはありますか?

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